- クーポン施策の種類とECサイトにおける活用方法
- クーポンを効果的に利用するための設計ポイント
- 成功事例に学ぶクーポン施策の導入効果と注意点

ECサイトでクーポン施策をすると、顧客の購入意欲を高めたり、行動を促進したり、競合他社のECサイトと差別化したりできます。その結果として、売上向上にも大きく貢献してくれます。
本記事では、クーポン施策がECサイトで重要な理由やクーポン施策とSEOの関係性、クーポン施策の種類を解説します。
また、クーポン効果を最大化するための設定方法やクーポン施策を導入する際の注意点なども解説しますので、クーポン施策を導入する際の参考にしてください。
目次
クーポン施策がECサイトで重要な理由
クーポン施策がECサイトで重要視されている理由は、主に以下の3つです。
- 顧客の購入意欲を高める心理効果
- 顧客の行動を促進するマーケティングツールとしての価値
- 競合他社との差別化につながるポイント
次項から、各項目の詳細を解説します。
顧客の購入意欲を高める心理効果
クーポンがあると顧客に対して「お得感」や「限定感」などの心理効果を与えられるため、購買意欲を高められます。限定性や希少性をアピールすることで「すぐに行動しなければいけない」という心理にさせることがポイントです。
また、使えるクーポンがあるのにもかかわらず使わないで失効してしまうと、損をしたような気持ちになる人も少なくありません。これは「損失回避」という心理効果によるものです。
行動経済学のプロスペクト理論でも、同じ額なら得をする場合よりも損をする場合の方が大きく感情が動くと言われています。そのため、クーポンを期間限定にすることで損失回避の心理効果を活用することも有効な施策と言えるでしょう。
顧客の行動を促進するマーケティングツールとしての価値
クーポンを適切に活用すると、以下のような効果に期待できます。
- 新規顧客の獲得
- リピート購入の促進
- 短期的な売上の増加
- カゴ落ちの防止
例えば、初回購入時に特典を付ければ新規顧客を獲得できますし、期間限定クーポンを配布すれば「後で購入しよう」と思ったまま忘れてしまうカゴ落ちを防げるでしょう。
このようにクーポンは顧客の行動を促進するマーケティングツールとしての価値があります。
競合他社との差別化につながるポイント
クーポン施策をすることで、競合他社との差別化も可能です。クーポンは、利用するための条件を幅広く設定できることが特徴です。そのため、競合他社がすでにクーポン施策をしている場合でも、被らない施策を立案することで差別化できます。
例えば、自社のECサイトでしか扱っていない商品と人気商品を合わせて購入すると割引になるクーポンを配布するというようなクーポン施策も可能です。
また、顧客を多く抱えているクーポン掲載雑誌やメディアでクーポンを配布すると、幅広い層にアプローチできるためブランド認知の向上にも期待できるでしょう。
クーポン施策の種類と活用例
クーポン施策の種類はさまざまですが、本項目では主流なものから以下の4つを紹介します。
- 割引クーポン(期間限定、金額指定、パーセンテージ割引など)
- 新規顧客向けの初回購入クーポン
- リピーター向けの感謝クーポン
- バンドル購入促進クーポン
割引クーポン(期間限定、金額指定、パーセンテージ割引など)
割引クーポンは、期間を限定にしたり金額を指定したりするなどの条件を付けて一定額や一定割合を値引きする形式の比較的分かりやすいクーポンです。
利用方法が分かりやすく、新規購入者からリピーターまで幅広く利用してもらえることが特徴です。そのため、状況を選ばずに使えることがメリットと言えます。
単に値引きをすると不信感を持たれてしまう可能性もあるので、期間限定や購入金額の制限をつけるなどの理由付けをした方が、安心して利用してもらいやすくなります。
新規顧客向けの初回購入クーポン
初回購入クーポンは、名前のとおり初回の購入者のみが使えるクーポンです。新規顧客の獲得を目的として発行されます。
単価が高めの商品や月額制・年額制のサブスクリプションサービスなどで、初回だけお試しとして安く提供するケースで利用されているクーポンの種類です。
実際に試してもらえるので、ECサイトの説明だけでは商品の魅力や効果が伝わりにくい商品を販売する際にも有効なクーポンです。
リピーター向けの感謝クーポン
感謝クーポンは、リピーターに向けて感謝を伝えつつリピート購入を促して、リピート購入率と顧客満足度を高めることを目的としたクーポンです。
既存顧客に対し、会員限定やユーザーの誕生日記念、登録からの年月などの理由を付けて発行します。
ただし、あまり頻繁に感謝クーポンを発行していると特別感も薄れてしまうので、ユーザーの反応を見ながら頻度を調整することがポイントです。
バンドル購入促進クーポン
バンドル購入促進クーポンは、複数の商品をまとめて購入する際にのみ使えるクーポンです。平均販売価格や客単価を上げたい場合に発行します。また、新商品と人気商品を組み合わせて新商品の認知度を高めたいときにも有効です。
ただし、まとめ買いをすることから購入金額も大きくなりがちなので、ギフトシーズンやボーナスシーズンなどのタイミングに合わせてクーポンを発行するなどの工夫をすると良いでしょう。
クーポン施策の最新トレンド
クーポン施策のうち、2024年冬時点での最新トレンドを3つ紹介しますので、参考にしてください。
- 動的プライシングとクーポンの組み合わせ
- パーソナライズされたクーポン
- SNSでのクーポン配布
動的プライシングとクーポンの組み合わせ
動的プライシングとは、需要と供給のバランスにあわせて商品やサービスの価格を変動させる仕組みのことで、ダイナミックプライシングとも呼ばれています。動的プライシングとクーポンを組み合わせることで販売を促進することができます。
例えば、消費期限や賞味期限の迫った食品が多く残っている場合で、通常の動的プライシングでは販売価格を下げるところを、代わりにクーポンを発行して購買意欲を高めることができます。
値下げをしてしまうと価格を戻したときに不満を抱いてしまう消費者も少なくありませんが、一時的に使えるクーポンで代用することでそのようなリスクを減らせる点がメリットです。
パーソナライズされたクーポン
顧客の購入履歴や属性からパーソナライズされたクーポンを配布することで、より効果的に顧客の購買意欲を高められます。
パーソナライズしたクーポンを配布する際は、おすすめする商品だけでなくクーポン付きのメールの文言も顧客に合わせてパーソナライズすることで、より効果を発揮します。
例えば、誕生月にパーソナライズしたクーポン付きのメールを送り、本文には相手の属性に合わせたお祝いの一言を添えるなどの工夫をすると良いでしょう。
SNSでのクーポン配布
SNSでクーポンを配布すると、自社のSNSアカウントをフォローしている人だけでなく、不特定多数のSNSユーザーに広くアプローチできる可能性があります。いわゆる「バズ」が発生すれば、数百万人の目に触れることもあるでしょう。
また、クーポン配布の条件に「SNSアカウントのフォロー」や「投稿の拡散」を入れることで、クーポンの配布後もSNSでアプローチし続けられるというメリットもあります。
クーポン効果を最大化するための設定方法
クーポン施策は、クーポンの内容や配布タイミング、利用方法を正しく設計しないと高い効果を得られません。クーポン効果を高めるための設定方法を3つに分けて紹介します。
- 配布タイミングと方法(メール、LINE、広告など)
- 使用条件の設計(最低購入額、適用商品など)
- 使用率向上のためのプロモーション方法
配布タイミングと方法(メール、LINE、広告など)
クーポンの効果的な配布タイミングは、イベントがあるときや新商品を追加したときです。また、既存顧客へ配布する場合は誕生月に記念クーポンを配布する施策も効果があります。
定期的にクーポンを配布したい場合は、特定の数字が付く日やゾロ目の日などにすると、ユーザーに覚えてもらいやすくなるのでおすすめです。
メールで配信する場合は、顧客リストを活用して既存顧客や見込み顧客に絞って配布しやすく、低コストで配布できることが特徴です。また、開封率やクリック率、コンバージョン率などを測定しやすいというメリットもあります。
LINEで配布する場合も同じく顧客リストを活用して配布するため、ターゲティング精度が高いことが特徴です。届いたときにプッシュ通知が出るため開封率が高くなる傾向があります。そのため、期限の短い期間限定クーポンなど見逃してほしくないクーポンを配布する際に有効です。
広告を利用して配布する場合は、顧客リストにないユーザーに幅広くアプローチできることが特徴です。一方で、コストが高くなりやすいというデメリットもあります。リターゲティング広告を利用して、過去に訪問したことがあるユーザーに絞って広告を配信し、再訪を促すような施策も可能です。
使用条件の設計(最低購入額、適用商品など)
ECサイトでクーポンの効果を最大化するには、まずクーポンを発行する目的を明確に設定し、それに合わせて使用条件を設計する必要があります。例えば、新規顧客数の開拓を目的にする場合と購入時の平均販売価格を上げることを目的にする場合では、効果的なクーポンの使用条件は変わります。
目的が決まったら、割引額や割引率、最低購入額、適用する商品、利用期間・利用回数、クーポンの対象者などを目的に合わせて設計しましょう。
利益率を保ちたい場合は、過去の販売データの平均販売価格などを参考にして、クーポンを利用する際の最低購入価格や割引上限額を設定することがポイントです。
使用率向上のためのプロモーション方法
クーポンの使用率を上げるためには「お得感」や「限定感」のある内容にして、伝わるようにアピールすることがポイントです。配布をする際は、イベントがあるタイミングや記念日など、顧客が利用したくなるタイミングを狙って配布すると良いでしょう。
また、クーポンコードを発行すると、発行したクーポンの効果測定がしやすくなるのでおすすめです。例えば、複数のインフルエンサーにSNSで宣伝してもらう場合でもクーポンコードを個別に用意することで、どの投稿が有効だったかを測定可能です。
ECサイトのクーポン施策の効果測定方法
クーポン施策は、その効果を正しく測定しないと適切に改善ができません。この項目では、効果測定方法を5つに分けて紹介します。
- クーポン利用率を計測する
- 売上への貢献度を分析する
- クーポン利用後のリピート率を把握する
- 顧客ごとのクーポン効果を見極める
- アンケートやレビューを活用する
クーポン利用率を計測する
クーポン施策の基本的な効果測定方法として、クーポン利用率を計測することが挙げられます。この利用率は、クーポンの利用回数を発行回数で割り、それを百分率で表したものです。
たとえば、1000枚のクーポンを発行し、そのうち200枚が実際に利用された場合、利用率は20%となります。
利用率が低い場合は、配布方法やクーポンの条件に問題がある可能性が考えられます。たとえば、配布チャネルを再検討したり、最低購入額の設定を見直したりすることで、利用率を改善することが可能です。
また、具体的な目標を設定することも重要です。例えば、新規顧客向けのクーポンであれば、利用率を15%以上とする目標を立てることで施策の効果を適切に評価できます。
売上への貢献度を分析する
クーポンが売上にどの程度寄与しているかを分析することも非常に重要です。この効果は、クーポンを利用して得られた売上を総売上で割り、その割合を算出することで把握できます。
たとえば、総売上が100万円でそのうちクーポン利用による売上が20万円の場合、売上への貢献度は20%となります。売上にあまり結びついていない場合は、クーポンの内容や配布対象に問題がある可能性があります。
具体的には、ターゲティングの精度を向上させたり、割引率や割引額を再調整することが効果的です。たとえば、高価格帯の商品に適用されるクーポンを導入することで、客単価の向上を目指す施策が考えられます。
クーポン利用後のリピート率を把握する
クーポンを利用した顧客がその後再び購入するかどうかを追跡することは、リピーターを育成する上で欠かせない要素です。このリピート率は、クーポン利用顧客のうち再購入した顧客数をクーポン利用顧客全体で割り、その割合を算出します。
たとえば、クーポンを利用した顧客100人のうち20人が再購入した場合、リピート率は20%となります。リピート率が高ければ顧客生涯価値の向上が期待でき、クーポン施策の長期的な効果を測定する上で重要な指標となります。
一方、リピート率が低い場合は、購入後のフォローアップメールや次回利用可能なクーポンの配布など、アフターフォローの施策を検討する必要があります。これにより、顧客との関係性を強化し、長期的なロイヤルティを育むことが可能となります。
顧客ごとのクーポン効果を見極める
クーポン施策の効果を最大化するためには、顧客属性に応じた分析が必要です。顧客の年齢、性別、購買履歴などのデータを基に、それぞれのセグメントに対するクーポンの効果を評価します。
たとえば、若年層にはSNSを活用したクーポンが効果的であり、一方で中高年層にはメールやLINEを通じたクーポンの方が利用されやすい場合があります。
このようにデータを活用して、顧客セグメントごとの最適なクーポン施策を設計することで、無駄なコストを削減しつつ、最大限の効果を得ることが可能です。過去のデータをもとに、新たな施策を立案する際の参考にすることが重要です。
アンケートやレビューを活用する
クーポン施策の改善には、アンケートや顧客レビューを活用することが有効です。顧客に対して「クーポンの内容に満足したか」や「クーポンが購買意欲にどの程度影響したか」といった質問を行い、具体的なフィードバックを収集します。
こうした意見を基に、クーポンの割引率や対象商品、利用条件などを調整することで、次回以降の施策の効果を向上させることができます。たとえば、顧客の声を反映して割引率をわずかに引き上げた場合、利用率が飛躍的に向上するといったことも考えられます。このように、顧客から得た情報を施策の改善に活かし、より効果的なクーポン施策を展開することが成功の鍵となります。
クーポン施策導入時の注意点
クーポン施策を導入する際は、以下の3つの点に注意をしましょう。
- コストと利益率のバランス
- 濫用を防ぐための対策
- 顧客満足度を維持するための工夫
コストと利益率のバランス
クーポンを発行する理由は新規顧客の開拓やリピート率の向上などさまざまですが、最終的には利益を増やすことが目的です。そのため、クーポンを提供したときにかかるコストを計算し、利益率とのバランスを考慮してクーポンの内容を設定することがポイントです。
利益率の低下を抑えるには、ターゲットを絞ったりクーポン利用時の最低購入価格・クーポン利用上限を設定したり、発行頻度を調整したりすると良いでしょう。
濫用を防ぐための対策
クーポンを発行する際は、不正利用や濫用を防ぐことが大切です。もし不正利用や濫用をされてしまうと、予想外の損失が発生してしまうかもしれません。
不正利用や濫用を防ぐには、システムやルールを正しく設定しておくことがポイントです。利用期限の設定、使用回数の制限などは最低でも設定しておきましょう。
また、クーポンコードの入力に失敗した回数などの異常な利用パターンを監視すると、不正利用をしようとする悪意のあるユーザーを早期発見できる可能性が高まります。
顧客満足度を維持するための工夫
クーポン施策を頻繁にやりすぎると、顧客の満足度を損なうリスクがあることに注意が必要です。例えば、ある商品を定価で購入した直後にクーポンが配布されると、損をしたと思われてしまうかもしれません。
また、顧客が「価値のあるブランドだ」と思って購入してくれていたのにもかかわらずクーポンを頻繁に出して安売りしているイメージをつけてしまうと、顧客が離れてしまうおそれもあるでしょう。
クーポンを配布する際は、ブランドや商品のイメージを損なわないか、頻度は高すぎないかを考慮しながら配布することが大切です。
まとめ:クーポン施策でECサイトの売上を伸ばすポイント
ECサイトにクーポン施策を導入すると、顧客の購入意欲を高めたり行動を促進したり、競合他社と差別化したりできます。その結果として売上の増加も見込めるでしょう。
クーポン施策をする際は、コストと利益率のバランスを考慮しつつ、顧客の満足度を高めるようにクーポンの内容を設計することが大切です。
本記事で紹介したクーポン施策の種類やトレンド、導入効果や導入時の注意点を参考にクーポン施策を設計し、売上の拡大や顧客の満足度向上を目指しましょう。